生涯学習概論

第1分冊
第2分冊

第1分冊

略題<「生涯教育とは」の問い>

受付15.10.02 評価B

普段生活をしているうえで新聞、テレビを見ているとパソコンの資格や国家資格の取得を勧める教室やいくつもの英会話スクール、高校や大学受験対策の学習塾等の生涯学習を促すコマーシャルを見ない日は無いというくらいであり、実際にそれらの教室に通う人も性別、年代を問わず増加している。また、大学を卒業してからも大学院への進学や専門学校へ入学し、さらに専門的なことを勉強する道を選んだ人も自分の周りに何人もいる。このことだけを聞くと今の日本の社会は生涯学習ブームと言えるかもしれない、しかし日本という国は社会人になるまでは何度か受験を経験することもあって学校の授業に加えて学習塾で勉強することが必要になってくるが、社会人になってからはあまり勉強しなくてもどうにかなってしまうような社会、習慣が少し残っているような気がしている。もし本当にそうだとしたらそれは問題で中高生や大学生の学力低下がニュースで報じられていることを考えると、結果的にどの年代でも学力の低下ということに成りかねない。また、実際に自分が社会人になり会社の体制など身をもって経験した結果、一人の人間について評価の対象となるのはその人の学歴や経験年数といった言わば過去の出来事で、いわゆる能力主義の制度が強く、将来的な面を見て評価してもらえないこともあるために日本は学歴社会であるという印象が自分の中では強いのも事実である。但し、このことについてはあくまでも全部が全部そうだと言っているのではなく、例えば採用試験の面接時には特に出身学校名を訊かない企業もあるし、あくまでもその人の成果、実績を評価の対象とする成果主義の会社も増えている。
このように社会全体が変わってきてはいるが、学歴を重視する能力主義、社会に出てからはあまり勉強をしなくてもどうにかなってしまう現代社会において最初に述べたような生涯学習教室に通う人が増えているのは、自己啓発的な活動を始めようという学習意欲を持ち、将来充実した人生を送ることを目標とするために生涯学習に取り組む人が増え、それに伴って社会全体が学校教育中心から社会教育も重視するように少しずつ変わってきているのではないかと考えられる。そのような生涯教育の役割を担ってきた社会教育活動だが、社会教育法内の規定において「学校教育法に基づき、学校の教育課程として行なわれる教育活動を除き、主として青少年及び成人に対して行なわれる組織的な教育活動をいう」と宣言されている。これは日本が社会教育を重視してこなかったということもあって、法律上では学校の教育課程に含まれる活動によって、社会教育の活動が定義されてしまうことになっている。
このことは例えば自分が会社に入社したときに行なった民間の講師を招いての社会人生活における一般常識を勉強した新人社員研修は、その研修でやってきたことは全部が全部すぐに役立つというものでは無いにしても知っておくのと知らないのとでは大きな差があることばかりで、学校教育課程では学べないことであるから社会教育であったと言える。このような生涯学習を始めるきっかけは学校教育では学べなかったこと、例えば趣味の分野においてもっと知識を深めようとして始める人もいるだろうし、将来的に必要不可欠な資格取得のためということで始める場合もあるだろう。自分にとっても会社員として生活していながら玉川大学通信教育過程で勉強を始めたのは、転職を視野に入れた学芸員資格取得のためである。好きなことを生涯に渡り一人一人が自由にカルチャーセンター、塾、博物館などで学習できることはギリシア語で「育成」や「教養」を意味し、全人的な教養と全面的な教育を意味するパイデイアという社会教育の概念に基づいている。そういう社会に自分がいられることで自分にとっての生涯学習とは学校教育だけでは足りなかったものを得るために勉強を続けることだと言えるが、実際には時間が無いという問題点を抱えているというのも事実である。いずれ学芸員として働きたいと思っているために資格取得中の今、思い切って仕事を辞めて勉強に専念しようかとも考えるが、生活していく上で収入が無くなるのは困るし、そういった面でも例えば職場の上司などの周りの人からの協力と自分で計画を立ててうまくやっていく必要がある。本当はできれば退職することなく長期休暇を取得でき、学習にあてられる期間を会社から用意されるような制度があると気兼ねなく勉強できるのだが、それは日本では常識外れの考えとされるだろう。
長い人生いろいろな出来事があり本当にやりたいことを見つけた時に「あの時もっと違うことも勉強しておけば良かったな」と思うこともあり、生涯教育とは家庭と学校に地域社会と企業、つまり国全体で協力して社会教育の分野に力を入れ、生涯学習を支援してもらえるような生涯学習体系への移行を進め、学校教育だけではやはり足りないものが多いので、自分のために自由に好きなことを勉強できるのが生涯教育だと実感している。

参考文献
「社会教育Ⅰ・Ⅱ」 高橋靖直、白石克己著 玉川大学発行
「生涯学習概説」 新海英行、竹市良成編 勉誠出版


第2分冊

略題<学校の学校外教育への利用>

受付16.05.27 評価A

学校外教育とは文字通り、学校での教育以外のいわゆる社会教育を指しており、それは現代の社会の「学校教育に終始していた」と言える学歴社会であった日本の教育制度の中で育ってきた大人たちが、それだけでは足らないと感じ、自己啓発的な活動を始めようという学習意欲を持った場合や直接現状の仕事に役立つため、自己の教養を深めるため、様々な技術を身につけるためなどのきっかけで取り組んでいくもので、いずれにせよ充実した人生を送ることを目標とする生涯教育という考え方で取り組んでいくものとも言える。そのような学校外教育には文化活動やスポーツ活動などさまざまな種類があり、活動の場についても教育活動の内容に合わせて地域住民の文化、スポーツといった教育活動の振興に対応するように整備された施設において行なわれており、学習の機会を提供できる施設の一つとして学校も挙げられている。例えば学校の図書館、博物館、資料館、体育館、グランドなどの施設を開放する「学校開放」と言われている活動で、既に社会教育のための公開講座の開設を行ない、地域の人々に施設を提供している学校も多い。社会教育法第44条に「学校の管理機関は、学校教育上支障がないと認める限り、その管理する学校の施設を社会教育のための利用に供するように努めなければならない」とあるように、こうした学校の教育機能と施設を開放していく学校開放事業は学校週5日制の実施を契機に地域の子供達に対しても学校外教育活動の拠点となるため、地域に開かれた学校づくりを目指していく上で大きな期待が寄せられている。代表的な学校として東北大学、香川大学では大学教育開放センターや生涯学習教育研究センターを設置し公開講座を提供している。また、パソコンの基礎、ワープロによる作品作り、ホームページ作りなどを高校生のボランティアスタッフと共に学習する高等学校もあり、こうした生徒や教員が関与した学校外教育に発展することで、より地域住民の生涯学習の機会を広げていると言える。また、「教育民主化の精神に則り、通信等の方法によって大学教育を広く開放する」という大学通信教育基準により私が学習しているこの玉川大学の通信教育課程も大学のカリキュラムを学習意欲のある社会人などに対して開放していると言えるだろう。
ここで私の考える学校開放の問題点としては、学校外教育に利用するための環境の充実のために同じような施設間の連携を通してさまざまな学習機会を提供することのための環境整備にかかるお金の問題や、講義内容の質と経費の問題からボランティア講師を受入れるかどうかなどが挙げられる。この点については法律上で社会教育法による社会教育行政の役割は条件の整備、環境の醸成であると明示しており、具体的には社会教育施設の設置、運営、及び社会教育関係団体への助成、指導、助言および社会教育指導者の養成が挙げられているため、地域に向けた学校開放で利用されるコンピュータ教室、音楽教室、家庭教室、図書室などの特別教室の設備の強化は国からの補助の対象となっていると考えられる。また、その公開講座についてはほとんどが大学の教員によって講義が担当されているが、民間企業や組織の専門家を講師として招くことも盛んになってきており、職業技術の習得などの新たなニーズに即応するなど、内容の改善を図るとともに期間についても数日や数週間など比較的短期間に集中して実施されている。また、学校の抱える問題はお金の面の他に安全面での問題もあると考えられ、学校開放する側として地域と協力して安全な社会作りから始めていかなければならないと考える。それは小学校に関しては学校内において全てを開放する事はそれほど危険なことは無いというぐらい最近ニュースで報じられているようないろいろな事件があるように、少なくとも自分が小学生だった頃よりも危険で外に出すのが敬遠されてしまうような現代社会の問題があるからである。この問題については今後も防犯対策を強化しつつ、地域社会や文部科学省から求められている学校開放事業を展開していくしか無いように思われるが、放課後や休日の人的警備や施設管理は教職員の本来的な業務ではないことを考えると、教職員の負担を軽減しつつ学校開放を存続発展させていくためには、やはり地域社会の協力が必要だと思われる。
これらの問題を解決しながら地域住民に学習機会を提供するために上で述べたように大学、高等学校等で週末に学校施設を活用して実施されている開放講座の充実を図るとともに、学校施設の地域への積極的な開放のため、開放実施体制の整備、地域への開放に配慮した施設の高機能化、余裕教室の活用などを進めていくべきであると考える。今後も「閉鎖的な学校」と言われていたことから「開かれた学校」と言われるように体制を変えることで地域社会との連携を深めることにつながり、学習意欲を持った人に対して学習の機会を与えることになっていくと考える。

参考文献
「社会教育Ⅰ・Ⅱ」 高橋靖直、白石克己著 玉川大学発行

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